■カフェオーレ梧桐
■中井茉莉さま

※ブルーの文字が中井さま。
薄灰の文字が梧桐です。



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見慣れた部屋のソファーの上で己の腹下部からぐちゅぐちゅと粘着質な音が聞こえる。
六氷に命じられ自慰行為をしていたロージーだが、あまりの羞恥に手が止まる。




「…オイ、手が止まってんじゃねェか。誰が止めていいなんて言った?あ?」


すかさずそう指摘してくる六氷はロージーが座っているソファーではなく、
自分専用の革張りのチェアーに身を沈めて悠々とロージーを眺めている。




「も…無理だよぉ…っ」
六氷に見られてる羞恥と、込み上げる快感に苛まれ大きな瞳から涙をこぼしながら、
先程から謁見に回っている六氷に恨めしそうな視線を送り、ロージーは非難の声をあげる。




「無理じゃねェだろ?オメェの…もうそんなになってんじゃねェか」
くくっと笑いながら悪態をつく。



六氷の言うとおり、ロージーのソコは爆発を待ち望んで震えていた。
恥ずかしくてたまらないロージーは六氷の視線から逃れるために体を捻る。


その行動に少々腹を立てた六氷は軽く舌打ちをしながらようやくチェアーから腰をあげた。
そしてロージーの向かい側のソファーに腰を下ろす。
「オラ…続き、やれよ」そう言ってまたロージーに行為を強要する。
六氷の瞳と声色に捉えられ、ドクンと胸を鳴らしたロージーは無意識に声を出していた。




「…ムヒョも、してよ…」














ロージーの彼らしくない大胆な言葉に、六氷は僅かに眉を寄せた。
だがその双眸にあるのは不快感ではない。
どこか愉快そうな色を浮かべて、六氷は抑えきれなかったようにくつくつと低く喉を鳴らして笑った。




「な、何がおかしいの…ッ」

思いがけない六氷の反応に少しだけ我に返ったロージーは、
羞恥と快楽に紅く染めたままの頬をいじけたように膨らませて俯いた。




六氷は尚も可笑しそうに口を手のひらで覆ったまま、
「いや…テメェもなかなか言うじゃねぇか、と思ってな」
と言ってふと手を伸ばすと、ロージーのすっかり成長しきっている弱みにふれた。


透明な蜜をとろとろと溢れさせる割れ目から指を這わせ、
なぞるように丁寧にその下の窪みを辿って、そのまま握るか握らないかのソフトさで上から下へと擦ってやる。



「…ぁ、ふ…ッ」

ロージーのそれは快感に堪えかねるようにふるふると震えた。
ぐちゅぐちゅと響く音だけで、彼がどれだけ蜜をこぼしているか分かるのに、
そこからは尚も新しい滴が生まれ、彼自身を伝いヒクつく後孔をもとろりと濡らしている。




「…ッ、ムヒョ…?」
突然途切れた心地よさに、ロージーは無意識に抗議の声を上げる。



「待ってろ」
六氷は机の上にあったペンを取ると、それをロージーの後孔にあてがう。
それだけで、これから与えられるであろう快楽に、カラダはヒクリと震えるように揺れた。
だが六氷の指はそれを挿れることはなく離れる。




「テメェで挿れろ」


「や、やだ…ッ」



自身の後孔に自らの手でペンを挿入する姿を想像して、ロージーは涙目で首を振った。
否定的な彼の台詞に、だが六氷はニヤリと笑って、
「テメェのはテメェでしろ。…オレのを、見てェんだろ?」
ゆっくりと言葉を区切るように彼はそう囁いた。



言いながら自らの服の前を開け、まるでロージーに見せつけるようなそれは、既にやや天井を向いていた。
見るのは勿論初めてではないが、正面から見る彼の存在感にロージーは見とれたように吐息を洩らした。














熱い吐息を吐き出すロージーを横目で見ながら、六氷は自分のたかぶりに手を添える。
「言っておくが勝手にイクんじゃねェぞ…」
その言葉にロージーの身体に怯えではない、…快楽を期待した震えが走る。



「…っ、ムヒョぉ…」
熱っぽく自分の名を呼ぶロージーに狂喜した。



「ホラ…ペン入れてみろよ。もっと俺を欲情させてみろ」
恥ずかしがり屋なロージーにはこれ以上無い羞恥の言葉を投げかける。




「テメェから言い出したんだ。…最後までヤッてみろ」
六氷はそう言うとゆるゆると自身をしごき始めた。


ロージーはというと、いつもは直視できない彼の猛ったモノに魅入られてしまったかのように動けなくなっていた。
完全に行為に集中している訳ではないであろう六氷だが、
彼の自慰行為なんて初めてみるロージーの目には強烈な残像となって残る。



「は…っ、手が止まってるぞ…」
そう言われたロージーは目の前の六氷の媚態に酔ったのか、
おずおずと自身に手を伸ばし、反対の手に持たれていたペンを秘部にそっとあてがった。




「ぅ…ん、ア……っ」
いつも六氷を受け入れるそこはいとも簡単にペンを飲み込んでいく。
冷たくて固い感触が少々不安げにさせたが、出し入れする度に徐々に快感に変わっていく。



「むひょ…アッ、んん…」
そんなロージーの媚態に満足げに口の端を吊り上げる六氷は、
自身を扱きながらもロージーを更なる快感に陥れる言葉を紡ぐ。





「勝手にイッたら…お仕置きナ」













「お仕置き」という言葉に、ロージーのカラダはあからさまにぶるりと震えた。

「…ッ、んだテメェ…何悦んでやがる」
どこか剣呑にすら見える光を宿した彼の目が、舐めるようにロージーの体を見つめた。




ロージーはトロンと酔ったような眼差しで、摩擦する手と共に後孔に飲み込まれている細身のペンで、
柔らかく解れてきたそこを、グチグチと音を立ててかき混ぜていた。
トロリと溢れる先走りが潤滑油のように、上下する指の動きをスムーズにし、
より深い快感を得ようとする彼は、無意識に腰を前に突き出すようにしながら揺らしていた。




それはまるで見てくださいと言わんばかりの、ひどく淫猥なポーズ。


快楽に溺れている彼は、自身が今如何に卑猥な姿態で六氷の欲情を煽っているのか、恐らく気づいてはいまい。
そんな様子はおくびにも出さず、六氷は口端を釣り上げるようにして笑った。





ロージーはまるでとりつかれたように一心不乱に、既に蜜でドロドロになったペンの出し入れを繰り返していた。
手が滑るのだろうか、時折深く突きすぎて眉間を寄せる。
ただそれすらも快楽に思えているような彼は、抽挿の度に甘い声で喘いだ。






「…ぁん…ッ、も…でちゃ、うよぉ…ッ…!」


両脚を開いて、下半身をトロトロに濡らした彼は、もうガマンできないと言うように、
カラダを仰け反らせてソファの背に頬を寄せるようにしながら、大きく震えた。






吐き出される白濁した体液が、ソファと床に独特の模様を描く。
後孔からは押し出されるように、ペンが吐き出された。
六氷はやや額に汗を浮かべている以外は殆ど表情を変えずにそれを見て、低音で囁くように呟いた。



「早ェよ…」


「ご…ごめんなさい…ッ」




絶頂の余韻でまだ虚ろな眼差しのまま、ロージーは泣きそうな声で呟いた。
それに心動かされる様も見せず、六氷は未だぐったりとした彼のカラダを引っ張ると、自らの前に跪かせる。



「舐めろ」
ヒク、と震えたロージーの小さな肩。
上目遣いで六氷を見上げるロージーの目には微かな怯えが揺れる。



「で…でも…ッ」
六氷はクッと喉を鳴らして、ロージーの頭を無理やり抑えつけた。




「ぐだぐだ言ってねェで、やりゃいいんだよ」
目前でそそり立つそれを見つめて、ロージーはゆっくりとそれに唇を寄せた。



含むのではなく、竿をくわえるように横から唇を当て、甘噛みするようにしながら舌を這わす。
ちゅ、とついばむような口づけを幾つも落としながら、空いた手でその下の嚢をやわやわと揉みしだく。




「…ッ、随分上手くなったじゃねェか…」

やんわりと、それでも確かに与えられる甘い痺れに、六氷の口から吐息が漏れる。
ロージーはふれる手をそのままに、唇だけをゆっくりと移動させて、
先走りでぬらりと濡れている先端をくわえ、口内で包み込む。




「…ッふ、んん…ッ」


ロージーは苦しげに眉間を寄せながら、喉奥まで一気にそれを飲み込み、
丁寧に舌先でくすぐるようになぞりながら、激しくはないが確かな動きで顔を上下させ始める。





「ッ…ロー、ジー…」

上目遣いに六氷を見たロージーの目に、吐息を洩らす彼の姿が映り、胸にじわりと甘い喜びが広がる。
くちゅりと口内で混じり合った体液が飲み込めずに唇の端から零れて、銀の糸を引いた。
















六氷は今更だがロージーの愛撫の上達ぶりに驚いていた。
自身を這う舌に唇、扱く指の動きも全て自分が教えた事だ。
その事実に口の端があがる。



「んむ…、は…っ」

ロージーの口から洩れる吐息は艶めかしくて腰にくる。
苦しげに寄せる眉も朱に染まった身体も、本当は愛しくてしょうがない。
…が、六氷の性格上それが伝えられる事は滅多にないのだが。




ぴちゃ、とイヤらしい水音が静かな部屋に響く。
すっかり奉仕に夢中なっているロージーの動作はだんだん大胆なものになっていた。
六氷を根元までくわえ、手で嚢を揉みしだいている。



「ロージー…すっかり夢中じゃねェか」
熱を帯びた声がロージーの耳に届く。その熱っぽさに六氷も確かに感じていると確信したロージーは、
もっともっと…と更に口淫を激しいものにしていった。




六氷から溢れる体液とロージーの唾液が混ざり合って、最早どちらのものかは判断できない。
じゅぶりと淫猥な音が聴覚を刺激し、快感を求める二人には催淫剤の役目を果たした。



「…っ、ロージー…もういい、やめろ…っ」

自分も絶頂に達しそうな快感に苛まれ、珍しく慌ててロージーに口淫をやめさせた。
…いや、やめさせようとしたのだがロージーはやめなかった。
六氷をイカせたいロージーは制止の声を無視して行為を続けたのだ。




「…っ、やめろ…!」
慌てるのは六氷だ。
まさかロージーがここまでするとは思ってなかった。


「ふぅ…んっ…」
ぴちゃくちゃと刺激する音ばかりが大きくなる。




それに比例して六氷とロージーの欲望も体積を増すのだった。
口淫をやめないロージーに眉を寄せながらも、やられてばかりでいる六氷ではない。
六氷もロージーの尻の肉を割り、隠れている秘部に指を這わせた。


つぷりと先程ペンを入れていた狭い穴に自分の指を埋め込んでいく。
それに今度はロージーが慌てた。



「きゃ、ぁーー…っ!」
まるで女のような高い声で鳴いたロージーに気を良くした六氷は、更に指を増やして中を激しく掻き回してやった。

















「やッ…はぁ、ん…」

掻き回すその場所から洩れる音は、すでにぐちゅりなどという生易しいものではない。
指はかき混ぜるだけではなく、中で折り曲げてみたり内壁を爪で引っかいてみたりなど、容赦なく責めてくる。




じゅぷじゅぷと激しい抽挿を繰り返す指がある一点に触れた瞬間、ロージーのカラダがビクンと跳ねた。
「ここが…イイのか?」
無意識にカラダを退こうとするも六氷の手はしっかりとロージーの腰を抱えていて、それは許されない。




「ひ、あぁ…ッ…!それ…ダメぇ…ッ」


堪えかねて身を捩る彼は唇での奉仕を続ける余裕もなく、すがるように六氷の腰にしがみついた。
「ダメ、と言う割に…随分とここは正直に吸いついてくるじゃねェか…」
最小限の動きのみでクチクチと内部の弱みを指腹で擦りながら、彼は空いた手でロージーの薄い胸で色づき、
ツンと上を向いた乳首を親指と人差し指でコロコロと転がすように、やや強く摘んでやる。





「あぁ…ッ、や…」
弱々しく首を振るロージーの耳元に顔を寄せて、六氷は吐息を吐きかけるようにしながら呟いた。



「や、じゃねェだろ、ロージー?」
与えられる刺激に身も心も翻弄され弄ばれているロージーは、喘ぎっぱしの唇に体液の筋を残したまま、
どこか頼りなげに六氷を見上げた。






視線が絡み、言葉はなくとも唇が重なる。


六氷は体内を執拗に責めていた指をゆっくりと抜く。
抜けきる最後、入口を抜ける瞬間の排泄感にも近い独特の感触に、ロージーは僅かに唇を噛んだ。
カラダを解放されて、改めて二人は互いの言葉を塞ぐように温もりを重ね合う。
舌を吸われ、流れ込んでくる唾液を嚥下して、それからふれあうだけの短いキスを落とし合った。





「どうしてほしいんだ、テメェは」

汗ばんだ額に張り付いた金糸を優しくかきあげる六氷の端正な指先。
それを両手で…まるで祈るような形で握って、ロージーは恋人の黒曜石のようなツヤのない双瞳をのぞき込んだ。





「ムヒョのが…ほしい…」


瞳の輪郭を涙で揺らせながら…けれどその奥で燃えるのは情欲の焔。
「めずらしく…素直じゃねェか」
からかうように言う六氷の瞳にもめずらしく余裕がない。




ロージーがそうであるように、互いの自慰を見せ合い、
競うように快楽で責め立てあうというある種異常な行為に、六氷も普段以上の興奮を覚えていた。






彼は舌先で乾いた唇を湿らせ、ゆっくりとロージーのカラダを抱き上げると、自身の膝を跨がせる形にさせる。
薄い肉付きだがそれでも柔らかでさわり心地の良い尻たぶを広げて、期待にヒクついている後孔に怒張をあてがった。


ロージーの下腹から脊椎を通り抜けてカラダを震わせる電流のようなもの。
自らに押し入り、圧倒的な存在感で直接的な快楽を生み出すその感覚をカラダで思い出し、ロージーは小さく声を洩らした。





「ぁあ、ん…」


「挿れる前からイキそうな顔してんじゃねェよ」

言葉と同時に、あてがわれていたそれは、一気に最奥まで貫いてきた。



「ひああ…ッ!」
指ともペンとも違う質量に、ロージーは六氷の首に両腕を回す。
彼が僅かに身動きするだけで、結合部はひどく淫猥で粘着質な音を立てた。

















淫猥な音が結合部から聞こえる度にロージーの身体がブルリと震える。
六氷自身をもっと奥へと誘うようにロージーの後孔は収縮を繰り返す。




まだ振動させてもいないのにロージーは早くも絶頂を向かえそうな快感の中にいた。
しかし吐精は、六氷の次の行動によって阻止される。



「テメェ…さっきイクなっつったのにイッたからな…まだイカせてやらねェよ」
そう言ってロージーの根元を何処から取り出したのか、リボンのような紐で括りつけた。




「やぁ…っ、ムヒョぉ……はずしてぇ…っ」
今にも絶頂を向かえそうだったロージーは、やめてやめてと頭を振って懇願する。
ロージーは熱を解放出来なくて狂ってしまいそうな感覚に陥っていた。



そんなロージーを見やってクッと喉を鳴らして笑いながら六氷は言った。
「お仕置き…だろ?」
その声色にガクガクと体を震わせた。


もう下半身の感覚がおかしくなっているのであろう、小刻みに痙攣している。
六氷はロージーの根元を拘束したまま、ゆるりとしごきあげた。





「あ…っ、あぁん…」
たった一撫でで甘ったるい矯声をあげたロージーに満足げに目を細め、今度は後孔に刺激を与えてやった。


「うぁ…アァ…ッ!」
先程とは違うどこか切羽詰まったような矯声。
物欲しげに震えるロージーの後孔に六氷も眉間に皺を寄せる。いつもより締め付けがキツい。



「ムヒョぉ…や、もぉイカせて…っ」
おかしくなる、とポロポロ涙を零しながら哀願した。
そんなロージーの姿はとても扇情的で、六氷も表情には出さないがひどく興奮していた。




「チッ…仕方ねぇな。じゃあ…後ろだけでイけ」
「え…っ」


言うが早いか、六氷はロージーをソファーに押さえつけ、前には一切触れずに後孔を犯しはじめた。
身を抉られるような快感にロージーの頭はスパーク寸前の状態だった。




「あ…っ、ゃぁん…!は…だめぇ!」
激しく後孔を犯されて、口を閉める余裕もないのか、ロージーの口の端から唾液が零れ落ちた。
甘い甘い矯声とともに。














ロージーにはすでにまともな意識は残っていないのだろう、
ただ喘ぐだけの人形と化してしまったように、六氷にされるがまま体を揺らしている。
まるで体中が性感帯のように敏感になってしまっているロージーは虚ろな目から透明な涙を幾筋も零して、絶頂を懇願する。




「…も、イかせて…ッ、死んじゃうよお…」

精をせき止められた彼自身も早く吐き出させてほしいというようにふるふると震えていた。
だが六氷は口元に笑みを浮かべて激しく責め立てるのみで、ロージーはソファに爪を立てて堪えるようにしながら、
「も…やだぁ…」と身を捩った。




「ッ…なんでも…するからぁ…、イカせて…ッ」


ロージーの指は自らの限界を超えた弱みに絡められていた。

あとは根本を無情にも締め上げる紐を解くだけ。
そうすればこの苦痛にも近い快楽から解放される。
けれどロージーは最後僅かに残った理性のみでそれを堪えた。





「ん…ッ」


ふいに六氷の指が、ロージーの首筋を撫でた。
その手はそのまま彼の髪を指先に絡めとる。
直接的ではないけれどそれでもどこか扇情的な仕草に、ロージーは体内にこもる熱を短く吐き出した。



その様子を見下ろしていた六氷の唇がふいに満足そうに笑みを形作った。
「テメェにしちゃ…頑張ったじゃねェか」














シュル…と拘束の紐が解かれる。その僅かな刺激でさえも今のロージーにとってはたまらない快感だった。
たったそれだけの動作で断続的に精を吐き出した。



「あぁ…ッ」
短く喘いだロージーの身体は快感によって痙攣している。
それでももっと強い刺激が欲しいのだろう、腰は六氷を誘うように淫靡な動きをしていた。




「テメェはイクのが早過ぎだ…」
クッと意地の悪い笑みで言ってやる。



そんな六氷もいつもとは違うある種異常な性行為と目の前のロージーの媚態に、
いつもの様な余裕はなく、いい加減限界だった。




「今度は俺の番…」

ズルッと猛ったモノをギリギリまで引き出し、勢いよく打ち込んでいく。
「ふぁ…んッ!」
待ち望んでいた強い快感の刺激に、歓喜にも似た声で鳴くロージー。





そんな彼の様子に満足し、挿入を繰り返していく。

二人きりの事務所でとても口では言えないようなイヤらしい行為をしている。
響く水音はどちらのモノなのかなんて、二人にも判ってはいないだろう。
「ム、ヒョ…ムヒョぉ…っ」
まるで譫言のように六氷を呼ぶロージーに、六氷も耳元に囁くように答えてやる。



「…ロージー…」
「ひゃ…あぁんッ!」
熱っぽい六氷の声色にたまらないといった喘ぎ声を洩らすロージー。





それと同時に六氷の腰の動きも早く、そしてロージーのイイところを重点的に突いてやる。
「や…っ、はぁ…ア…ッ!」
狂ったような声で鳴き、必死で頭を降るロージーの手はソファーを握り締め過ぎて、彼の白い手を更に白く見せていた。



六氷はロージーの腰に置いていた手と反対の手を、その白い手に重ねる。
ただそれだけなのに体温の暖かさに安堵する。





そして互いの絶頂を迎えるために行為を続けた。
ぐちぐちと締め付ける後孔に六氷もたまらない快感を得ていた。



「…は、…っ」
自分の余裕の無さに自嘲の笑みが零れる。腰の動きは激しさを増すばかりだ。





「やぁ…も、イク…ッ!イッちゃ……あっ!」
ロージーからポタポタと白濁の液が零れ落ちる。
ぎゅうぎゅうと締め付けられて六氷も我慢ならなかった。



「オイ…俺もイカせろ…」
白濁を零すロージーに嫌味を込めて言ったのだが、その台詞に熱が籠もりあまり意味をなさなかった。
ぎゅうぎゅうと締め付ける後孔に、気を抜けば達してしまいそうになる。


流れる汗もそのままに六氷は容赦なく責め立てた。



「ハ…ッ」
「あぁ、ん…む、ひょ…っ、壊れちゃ…っ!」
そのあまりの動作にロージーが悲鳴をあげる。



だが色づいた二つの小さな花弁はツンと上を向いて固くなっていたし、何よりロージーの雄は天を向いていた。
「もっと壊れちまえよ」
ぐぐっと奥まで挿れるとロージーの口からこぼれる矯声もより一層艶やかなものになる。



六氷もロージーも互いの絶頂を迎える為に動作のみに神経を使う。
洩れる矯声、響く水音、静かな部屋で行われる淫らな行為。
二人はその全てに興奮していた。




「も、イク…ッ!あぁぁ…ッ」
ロージーがそう鳴くと、六氷も今までで一番奥に自身を打ち込んだ。





「あ…ッ!あぁぁー…ッ!」
「……ッ!」
勢いよくロージーの精が吐き出されたのと同時に、六氷も己の精を注ぎ込んだ。




ソファーに出来た染みの数はもはや数えるのが馬鹿らしいくらいだった。
















くたりと力ないロージーの肢体。
赤みが差したままの肌と、半眼に伏せられた瞳、その全てが行為の激しさの証だった。




絶頂を何度迎えたか、そんなことに思いを巡らせる余裕もない彼は、ただぼんやりとソファの上に散った白濁を見つめていた。
一転して静かになった事務所。



窓の向こうから聞こえるクラクションの音に、今がまだ昼間だということを思い出す。

六氷はふと短い吐息をこぼして、ロージーの後孔に栓をしたままのそれを抜こうと腰を引く。
性感をゆるりと刺激するその感覚に、ロージーはひくりとカラダを震わせて反応した。
ズチュリと半ばまで引いた辺りで、ロージーがふと目線だけを六氷に向ける。





「まだ…抜かないで」

嫌と言うほど淫らに張り上げ続けたせいで、すっかり掠れてしまっているその声に苦笑を浮かべながら、
六氷は先刻まであれほど激しく責め立てていた行為が嘘のような優しい手つきで、ロージーの髪を撫でた。




柔らかで少しクセのあるその穏やかな陽色。
梳くように、絡めるようにふれる仕草に、甘えるようにロージーは微笑った。



「誰か来ちまうかも知れねェぞ」
このままでいて、とめずらしく大胆な彼の言葉をからかうつもりで言ったのだが、
ロージーは笑みを浮かべたまま、うんと頷いた。




「それでも…いい」
幸せそうに満足そうに呟いた彼に、六氷はくくっといつもの押し殺した声でさも愉快そうに笑った。






そうしている間にも、うとうとと眠りに漂うようなロージーの眼差し。
未だ体内で感じる熱に、快感とは別の心地よさを感じているのだろうか。



「寝て構わねェぞ」
「…ん」


こっくりと深く頷いたロージーは睡魔に抗うのをやめ、ゆっくりと眠りの波に沈んでいく。
そうしてすぐに聞こえてくる深い寝息。




「ったく。大胆なんだか何なんだか…」
する前には『事務所でするのは嫌』だとか全否定していたくせに、いざヤッて終えてみれば『抜くな』だ。






「ホント、テメェはオレを飽きさせねェ」

くつくつと喉を鳴らして言い放つ言葉とは裏腹に、その声色はひどく優しい。
弄ぶように指先に絡めていた陽色の一房に唇を寄せて、
六氷は聞こえるか聞こえないかの本当に小さな声で囁いた。




「     」




それはロージーが起きていたなら真っ赤になって卒倒していたであろう、愛の言葉。
それを直接聞かせてやらないのは、自らの青さだろうか、と考えて、すぐに否定する。




違うな、教えてやらないのは偏にその方が面白いからだ。


「もっと…楽しませてくれよ、ロージー?」
ニッと口端を上げる笑みは凄絶にすら見える。






ロージーは何も知らぬまま穏やかに眠り続けている。
六氷は涙の跡の残るその頬に口づけを落としてやりながら、小さな背を優しく抱きしめた。



















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「ん……」
もそりと細い身体がベッドの上で身じろぎする。


ロージーは虚ろな目で窓の外を見やり今が夕方だということ、そして自分の身体が清められている事に気付いた。
先程の汗と体液にまみれた身体は、彼によって綺麗にされていた。




「ムヒョ…」




声に出すだけで身体全体に染み込んでいくこの感情は何だろう。

恋だとか。
愛だとか。
そんな簡単な名前じゃない。
時には彼を想うだけで狂ってしまいそうになる事もある。
この慕情は恐らく両刃の剣。優しい気持ちにもなるし、独占欲ゆえに自分の籠に閉じ込めてしまえたらと思うこともある。



そこでロージーは自嘲した。
浅ましいにも程があると。
自分の籠だなんて、彼ほど力量がある訳でもないのに。





「……っ」
滴り落ちる涙は彼を想う証だ。



苦しい。
彼を想いすぎて。
自分の感情がコントロール出来なくて怖い。
このままではいつか本当に壊れてしまいそうだ。



どうしてこうなるのかは判ってる。
彼から愛の言葉を聞かないからだ。
誰だって愛の言葉がごく稀にしか囁かれる事がなかったら不安にもなるだろう。






その時、事務所側の扉が開いた。
「オイ、いい加減起きろ、……何泣いてんだ?」
心地良い声が鼓膜に響く。安堵する姿が、魂が網膜に焼き付く。



先程とは違う涙がロージーの大きな瞳に溢れた。
そんなロージーにづかづかと近寄りベッドに腰をかけたムヒョは、何の前触れもなくロージーをその広い胸に招き入れた。




「…今日はもう休業だ。たまにはゆっくり寝ろ」
その言葉と行動にロージーは目を見開いた。



ぶっきらぼうだけど彼にしては優しい言葉。
色んな感情を綯い交ぜにした複雑な感情がロージーを襲う。
判っているのは彼をとても大切に想っているという事。
数多いようで実は少ない単語で綴るなら…




愛してる。彼だけを。
だからお願い、一人にしないで。






「ムヒョ…愛してるよ…」
その言葉にやはり返答はなかった。
愛の言葉を紡ぐのはとても容易い事だけれど、それが相手に響くかどうかは判らない。




願わくば届きますように。
願わくば彼も僕の事を少しでも愛してくれていますように。
そう祈りながら瞳を閉じる。



彼の匂いが鼻腔をくすぐる。
…とても気持ちいい。
ロージーはいつの間にか夢の世界へ堕ちていた。






ロージーが深い眠りに誘われた後、六氷はロージーを横に寝かせた。
一度退室し、戸締まりをした後にまたロージーの部屋に戻る。
涙の跡をそっと拭いてやり、少し思案した後ロージーの隣に横になった。



「何を考えていたんだか……」
本当は判っているのだが…、呆れ顔でロージーの寝顔を見る。
先程の泣き顔が嘘のような安らかな寝顔だ。




「ったく…」
壊れ物に触れるかのように優しいキスを額に降らす。
それは見る者が見れば唇に触れるよりも、愛しいものに触れる動作だった。






「仕方ねェナ……明日あたり…言ってやるか」
六氷は小さな溜め息を吐き出すと、自分も眠りにおちた。



明日の朝、ロージーは別の意味で涙を零す事になる。