ふと、ただ、そんなこと。













心が痛いよ、とオマエが言った。


んなの知るかとオレは言う。


ねぇ、切ないよとオマエが言った。


知らねぇ知らねぇとオレは首を振る。







見ると、オマエの頬は僅かに零れた液体で濡れていた。


あぁ、また泣いてたのか。


オマエは尚も液体を溢れさせる。


どうしてぇんだよ、一体。


オマエの唇だけが空しく何かを言いかけて動いた。


あぁ。


オマエがはっとしたようにカラダを震わせる。


分かったよ。


結局何も言葉にしなかったオマエはほっとしたように、ようやく微笑った。



こうして欲しかったんだろ?




オレの腕の中で、オマエは静かに頷いた。

その眦から、最後の粒が零れて、落ちた。