ひとり














寂しいな。
僕はぽつりとそこにいた。



目の前を通り過ぎる人たちはたくさんいるのに。
誰もぼくの前で立ち止まってはくれないの。


みんな楽しそうに笑い合い、過ぎていく。
そして僕はひとりぼっち。
この場所は真っ白で、静かで泣きたくなる。





人の群れはまるでぼくの孤独ばかり引き立てるようでツラくなるから、
僕は何も見えないように、抱えた膝に顔を埋めた。


聞こえる。
遠ざかる人の足音。
ギュと強く、膝に爪を立てる。






「ロージー」
呼ぶ声が聞こえる。
きっといつもの幻聴だ。




「ロージー」
また聞こえた。







ゆっくりと顔を上げる。
涙でぼやける視界に映った人影。


「行くぞ」
差し伸べられた手をじっと見つめる。





君には、僕が見えるの?
こんな僕を必要としてくれるの?



疑うように僕はじっと固まって、その手を見つめ続けた。
けれどいつまで経っても、その手が退かれる気配はない。
ただじっと、黙って僕を待っていてくれるその手。







「ロージー」


ぼくの名前。
君は呼んでくれるんだね、ぼくの名前を。





恐る恐る手を伸ばした。
ふれたと思った瞬間に、強く握られ引っ張られる。
温かい、ずっと忘れていたその感触に、僕はただ、ぱたぱたと涙を落とした。






人並みの中を、彼に手を引かれて僕も歩き出す。


離さないでね。
僕がもう二度と、一人はぐれてしまわないように。






















■ロジ→ムヒョのようでいて。
実はイベント会場で魔法律に興味を持ってくれる方が少ない中、スペースでぼんやりする自分の心境と、
本が売れた時の心境で書きました…(身もフタもない)
なんかそんな解説を入れてしまうと、居たたまれない…_| ̄|○