祝福












今日は食卓に白い花を飾ろう。
可憐で繊細な茎を持った、一輪の花。




空気が凛と澄んでいて、
雨上がりの風が涼しく心地いい。

こんな日には、きっとこんな花がよく似合う。












春には冷えていたカラダをそっと温めるような薄紅の枝を。


夏には空へとひたむきにその顔を向ける陽光のような花を。


秋には夕日に照らされた子どもの手の平のような鮮やかな紅の葉を。


冬には寒さに震えることなく凛と咲く薄紫の薄い花びらを持った花を。











この花に、君は何を想うだろうか。




君はいつも事務所にこもりっきり。
夜中に仕事で出るくらいで。



君はほとんど景色を見ようとしない。
裁く身のオレには、陽光など似合わないだろう?と、
自嘲気味に笑った君の姿が、僕にはとてもかなしかったんだ。



それなら僕が、君に季節を運んでこよう。
空を、風を、花を、緑を、土を、滴を、その全てを。





ほんの一瞬でも、君に優しい世界が与えられますよう。














白く可憐な花が、僅かな風にその花弁を震わせる。
淡い光に照らされて、テーブルの上に小さな影が映りこみ、それは儚く揺れた。
小さな花瓶の下には、繊細な刺繍のされたコースターのような布が敷かれている。




朝食が並べられたテーブルに目をやりながら、ムヒョは席についた。
寝起きの瞼をこすりこすり、ふと何かに気づいたように瞳を眇める。





「・・・今日はこの花か。テメェはほんと花が好きだナ」



指先で薄い花びらを撫でる彼の姿を見つめて、
エプロン姿のロージーはにこりと微笑った。





「・・・キレイでしょ?」


「あぁ・・・そうだな。・・・名前は何て言うんだ?」




とても穏やかな表情と、愛しむような手つきで。
霊を厳格に裁く彼の指が、ほんとうはとても優しいことをロージーは知っている。

窓から僅かに差し込んだ光の粒子が煌めきながら、ムヒョと花を包んでいて、
まるでそれは永遠の幸せの瞬間だった。




だからロージーはいつものように笑って頷いた。





「そのお花はね・・・・・・」

















君が拾えない分の幸せも、僕が君へと運んであげられたらいい。
両手に抱えて溢れんばかりの優しさを幸せを、君へと贈ろう。
光とともに君へと降らせよう。






今日は純白の華奢な花。


明日は何を飾ろうか。





君へと、何を贈ろうか。