白昼夢














僕は、きっと夢をみていたのだ。








うっすらと窓から差し込む柔らかな陽光が心地いい。
細く開けた窓の隙間から、そよそよと風が室内に流れ込み、
いつの間にかソファでうたた寝していた僕の頬を撫でるように通り過ぎた。




雀だろうか、鳥の囀りが聞こえる。
何だかとても楽しそう。


夢とうつつを浮き沈みを繰り返すように行き来しながら、
僕はそんなことを思って微笑った。





優しい光が穏やかにカラダを、心を包んでいく。
軽く伏せた瞼の向こうには乳白色に照らされていた。









あぁ、寝ちゃダメだ。



今日は休日だから、お部屋の掃除もしたいし・・・。
いい天気だから、お布団を干せばきっとふわふわになるだろう。
そういえばこの前完成した、新作のお菓子・・・ムヒョに食べさせてあげたいな・・・。


寝たらダ、メ・・・。







うっすらと開けた瞼は、まるでそれが必然であるかのように、
ゆっくりゆっくりと閉じられていく。



まるで白いベールが覆いかぶさるように、
視界が薄く白い粒子に包まれていく。









と、閉じられていく視界の先、誰かがいるような気配を感じた。


だれ・・・?



呟こうとした言葉は声にならず、唇だけでその形を刻むのみだった。
おぼろげな輪郭の人影は、ゆっくりと僕の傍に近づいてくる。
耳元でそっと何かを囁かれ、僕はこそばゆさに溜息をついた。


なぁに?
よく・・・聞こえないよ・・・。





それは、完全に瞼が伏せられ、眠りに落ちる間際。


唇に、ふれる温もりを感じた。











あぁ、僕は夢を見ていたのだ、きっと。
柔らかな午後の日差しが生み出した、幸せな幻。






だって。

だって、そんなわけがないのだ。


「愛してる」



君がそんなことを言うなんて。