魔法










行過ぎて見えなくなって、
すくい上げては指間をすり抜けていく迷い子のような言葉たち。




紡いで紡いで、
ただ唯一の君に届くようにと。







あぁ、可能な限りに広げた腕の、その指の先。
そよ風にふわりと浮く髪の一房。
ただ倒れぬ為に踏みしめる両足だとか。



その全てから囁くよう叫ぶように、
自由に空を舞う鳥の通り過ぎていく影のように。
ほんの刹那でも、君の傍へと舞い降りられたならそれで。







飛んで行け。
目指す場所はただ一つだから。




迷わぬよう、見失わぬよう、その場所を目指せ。








そう、そして、それがひとひらの雪となって、ひとしずくの雨となって。
君に吸い込まれていける、まるで天の恵みのような、そんなものであれば。





夢見るように、君が青い空を見上げるときがくればいい。
碧い水面を覗き込めるときがくればいい。
蒼い夜空の下でひとときの安らぎを得るときがくればいい。


舞う蝶に心奪われるような、そんなときが。






届くだろうか。
届くだろうか。






僕のささやかなヒカリは、君を照らす道しるべになりますか。









君が暗澹たる底に落ちてゆかぬように、
僕はいついつまでも、君へと言葉を届けよう。





僕の中にいつの日か咲いた花が枯れてしまうその日まで。
溢れんばかりの、この心を。