陽炎









「オレに何も求めるな」




そう冷たく言い放った君の声はとても冷たくて、
その目に感情はなくて、
優しさなど微塵もなくて。


すがりつく僕の手を平然と払い除ける。
それこそまるで、寄ってきた虫を煩わしく思うように。
どうして、なんて感情はとうになく。
痛いなんて思いもまた同じく。



涙は流すだけ流しても
眉ひとつ顰めることない君に、
僕はこれ以上何を求めようがあるというの。


君の姿さえこの眼球で捉えることができて、
それは情報として脳に伝わるだけ。
それだけでもう何も求めるべくもない僕に、
「求めるな」それはほんとうは誰に向けた言葉?





「アイツが見ているのはエンチューだけさ」
そう言ってヨイチさんが差し出してくれた手に
笑って首を振ったのは僕。



知っているよ。
初めて君と会ったときから、
ずっとずっと君と共にいて、
その目が僕のいるこの景色を通り越してどこを見ているのかなんて、
考えるまでもなかった。





知ってるよ。

だから僕は笑って頷くんだ。
肯定の言葉を口にして。
君に忠誠を誓うように。











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「ッぁ・・・痛・・・ッ・・・!」



カラダに走った鋭い痛みに、
ロージーは思わず抗議の声を上げた。
そんな声などまるで耳に届かなかったかのように、
痛みを与える当人はそれを意に介する様子はない。




「む・・・ヒョ・・・いた、いったら・・・ッ!」
突っぱねるように両手を伸ばすが、
ムヒョは僅かに眉を寄せただけだった。



黙ってその手のひらでロージーの口を覆うと、
ピンと膨らんだ胸の突起に歯を立てる。
幾度となく乱暴に責められ、擦られたそこは、
うっすら血が滲み紅く充血してしまっていた。
ロージーは目の端に涙を浮かべて、
再度両手を突っぱねた。



「ち・・・ッ、邪魔くせぇな・・・」

そう呟くや否や、まだ首に掛かったままのロージーのタイを引き抜くと、
暴れるその手を強引に縛り付ける。




「・・・いいザマだな、ロージー」
シャツをはだけ、下半身を露わにし、喘ぎを洩らし続けるロージーの姿。
淫靡な光景にムヒョはニヤリと笑って、剥き出しの白い太ももにふれる。
そのままゆっくりと、屹立する彼自身にふれた。




「ぁ・・・ッん・・・!」

ビクンと跳ねるカラダ。
ムヒョの長い指が絡むようにそれを握り、
親指を先端の窪みに沈ませるように何度も擦らせた。
零れる透明の液体が快感の量をそれ自体で表すように、
指を伝って溢れ落ちる。



「ふ、あ・・・ッ・・・!」



そうしてロージーの熱を高めるムヒョの指が、
ふいにその動きを止めた。


「・・・ッぁ、ム、ヒョ・・・?」



不安そうに見つめてくるロージーに、
底の見えぬ昏い視線を投げかけて、ムヒョは微かに笑った。










「やだ・・・ッ!ムヒョ、やだ、やだ・・・ッ!・・・」

「うるせぇ。黙れ」


強引にカラダを引きずられ連れてこられたのは、
事務所の入り口、扉の正面。
そこに半裸のカラダを押し付けられ、
ロージーはこれから行われることへの恐怖に
悲鳴に近い泣き声を上げた。



「だ、って・・・ダレか来たら・・・!」
どうするの、とそう続けるつもりだったロージーの言葉は、
信じられないムヒョの行動により行き先を失う。
目線を落とすその先で、ムヒョの手は事務所の鍵を解除していた。




「な、んで・・・鍵・・・」
「この方が面白ぇだろ?」
「そんな・・・ッ・・・!」



尚も抗議しようとするロージーの細い腰を引き寄せるように抱え、
双丘の割れ目を指でなぞった。
些細な動きにも、ロージーのカラダは敏感に反応する。



「オマエに選択権はねぇんだよ」

そう言いながら、ヒクつく彼の弱みを何度も撫で上げた。
反抗的なロージーの言葉とは裏腹に、
そこは更なる快楽を求めてムヒョの指を呑み込もうと蠢く。


「や、だ・・・ッ・・・う、ぁ・・・」

グチュリ、音を立ててムヒョの指がロージーの中へと進入する。
熱い。
抽挿を繰り返しながら、指の本数を増やしていく。



「あ・・・ッ・・・ぁう・・・、ん・・・!」

ズルリと指を引き抜くと、排泄感にも似た快感に、
ロージーのカラダは大きく震えた。
そのままムヒョはロージーのカラダを扉に押し付けるように、
自らのそれをそこに挿しいれた。
異物を吐き出そうと動く内部の襞が、
まるでそれ自体が別の生き物のように蠢き、キツく締めつける。




「は・・・ッ!いつにも増してすげぇ締め付けじゃねぇか・・・興奮してんのか?」
「そ、んなこと・・・ッ・・・、・・・ぅあ・・・ッ・・・!」



抉るように出し入れを繰り返す。
締めつけながらも抽挿を許すそこは、
ムヒョが与える行為に慣れてきた証だろうか。




「そんなに声上げたら、誰か来ちまうかもな」


クッ、と喉奥で笑うその声と、耳元で告げられた内容に、
彼のカラダは素直に反応してしまう。
ムヒョは内側からの責めに反応していちいちヒクつくロージー自身を乱暴に扱いて、
「それとも・・・やらしいテメェは、それがお望みなのか?」と
一言一言、確認するように呟いた。




冷静なセリフとは裏腹の激しい行為に、
扉がガタガタと音を立てる。
事務所に響くのは、二人の結合部から聞こえる、淫猥な濡れた音だけ。



「ムヒョ・・・ぼく、もう・・・ッ・・・!」
限界を告げる声に、
「まだ早ぇだろが」
言われて、握られている先端を強めに圧迫された。


射精を強引に堰き止められ、
たまらずロージーのカラダが跳ねる。
抑えられれば抑えられるだけ膨れ上がる射精欲に、
気が遠くなるほどの思いを味わって、
彼は堪えるように縛られた両手を胸の前で握りしめた。



「ぁ、ん・・・ム、ヒョ・・・、おねが・・・いッ・・・」

そうしている間もムヒョは抽挿を緩めようとはしない。
壊れるかと思った。
否、すでに壊れているのかもしれない。
自身が誰で、何を望んで、何をしているのかも分からなくなる。
溜まる一方の快楽に、脳がとろけていく。






「・・・イキてぇのか?」
耳朶を甘噛みされながら、優しい声で囁かれる。



その言葉にすがるように、ロージーは何度も頷いた。
後孔が手放してしまった理性の代わりに、
まるで意思を持っているかのようにムヒョを締めつける。
締めつければ締めつけるだけ、
その感覚はダイレクトにロージーのカラダにも伝わり、
耐え難く下半身を痺れさせていく。



「ぁ、ふ・・・ッ、あ、あ・・・っ」
嬌声と共に、誘うようにロージーの腰が揺れる。

「まぁ、いいさ・・・オレもそろそろ限界だ・・・」


そう言うも、ムヒョは眉を少し寄せただけで
その表情は何も変わらない。
ロージーの腰がビクリと一際大きく震えた。
ムヒョは挿入する腰を、より深く突き入れ、内部に欲望を吐き出すのと同時に、
ロージー自身をつかんでいた手を解放してやる。



「く・・・ッ・・・」

「ッあ!ぅ・・・あぁぁ―――・・・ッ!」


突如に許された絶頂に、
ロージーの腰はびくびくと何度も白濁を散らせた。
それはぱたぱたと事務所のドアに模様をつくる。
ぐったりと倒れ、虚ろな目を向けるロージー。



ぺたりと床に脚を投げ出す彼の内腿に、
後孔から溢れた液体が、白く伝い落ちた。











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「オレに何も求めるな」



それは究極の忠誠に似ている。
そんなことをぼんやりと思いながら、
僕はゆっくりと頷いた。



太腿を伝う粘っこい液体が少しキモチワルイ。
何度も、何度も犯され蹂躙された内部は熱を持ち、
余韻を残して震えている。





逆らうことを知らず、
疑うことを知らず、
ただ忠誠を誓う犬のように、
君を見上げる僕。



「僕は、何もいらないよ・・・ここにいられるのなら」
君が誰を見ていても、と心の中で付け足す。





彼の代わりにと僕が選ばれたのなら、
それはきっととても喜ぶべきことなのだ。
だから、これでいいんだ。




「それなら、いい」

それだけ呟いて、
ムヒョはそっと僕の唇に、自らのそれを重ねた。
さっきまでの激しさが嘘のような、静かな口づけ。






微笑む僕の頬を、ふと透明なしずくが伝った。
「ロージー?」
怪訝そうなムヒョの声。




「なんでもないよ、なんでも・・・」
言い聞かせるように呟いて顔を伏せる。

堰をきった涙は止まらず、
僕はいつまでも、幼い子どものように泣きじゃくった。











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君は、残酷だね。



求めるなと突き放しておきながら、
こんなにも優しいキスを、僕にくれるんだもの。





















■あわわ・・・!
中途半端なえろす・・・すみません・・・!
ムヒョロジ初えろす作品がこれって、わたし自分の人格疑います(ほんとにな)
え・・・えろす描写の修行に行かなければ・・・!(大量汗)