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裂くような痛みじゃない。



死んでしまうような苦しみでもない。







ただ、痛い。




ただただ胸を押さえてしまいたくなるような、
そんな痛み。

















久し振りに会ったロージーは、
数年前に会ったときと何も変わってはいなかった。





ほんわかと笑うその仕草や、
ちょっとからかっただけですぐムキになるところ。
その全てが記憶に残る姿と変わらず、
それが嬉しくて思わずこちらが笑ってしまうほどで。








ただその眼差しは昔と変わらず、
いつも、ただ一点を見つめていた。





時には焦がれるように。
時には、眩しいものを見つめるように。











視線の先には彼の唯一の主人の姿。












初めてその視線の意味に気づいたとき、
自身の中にあるロージーへの想いにも気づいて・・・
俺はただ苦笑いするしかなかった。







俺が惹かれたその眼差しが、
俺を見てはいないと知ったとき、
微かに胸に刺さった傷みを、今でも忘れられずにいる。

















雪に霞みかける町並み。




彼は彼自身の才能の有無に苦しんでいて、
それすらもムヒョのためだと知ったとき、
嫉妬という触手にこの身を絡め取られそうになりながら、
それでも俺にはロージーの背中を押してやることしかできなかった。





俺じゃだめか?


俺なら、お前にそんな苦しみ、絶対に与えやしない。




思わずそう言いそうになる言葉を無理矢理飲み込んで。











そうして魔列車の出現のあと、
眠ったムヒョを抱えて戻ってきたロージーの姿に安堵する反面、
雪の冷たささえ忘れてしまうような、そんな切なさが心を染めた。




それをごまかしてロージーを茶化して、
こうやって笑い合えれば
もうそれでいいじゃないかと思おうとした。





















「じゃぁ・・・ヨイチさん、僕ら帰りますね」
って言ってもムヒョはまだ寝てるけど。




そう言って丁寧にお辞儀をするロージーに、
俺はヒラヒラと手を振った。






「またな。」








それだけを、
ただ万感の想いで告げる。













微笑って、
踵を返して、
歩き出す後姿。









風に舞う雪で、時々霞んで見えなくなる。






今すぐにでも追いかけて、
華奢なその背を抱きしめたい衝動に駆られる。











旧友の大切な人だから奪えないなどと、
偽善的なことを言うつもりはない。






できるなら彼を捕まえて、
誰にも手の届かない場所で、
共にいられたらそれだけで構わないというのに。






ただそうしたなら、
きっと彼は泣くのだろう。






恨み言など何一つ口にせず、
ただ涙を落とすのだろう。










彼に笑っていてほしいというのも、
それすらキレイ事にすぎないのかもしれないけれど。

















小さくなるロージーの背をじっと見つめる。









振り向け。







振り向け。








もしも振り返ったなら、
この想いが叶うような気がして。















帰還用の魔方陣に消えて、
その姿が完全に見えなくなるまで、
見えなくなったあとも、
俺はそこに佇み続けた。











何も残らないこの場所で、
彼が残した痛みに、苦く笑いながら。





















■よ・・・ヨイロジ?(聞くな)
初ヨイロジ・・・挫折しました・・・あわあわ。

ヘタレ気味ヨイチを目指していたはずが、ヘタレは私でしたという・・・!(痛)